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「杉村君の同期の…総務の子でしょ。可愛いわよね、彼女」
総務部とシステム開発部のフロアは階が違うが、しょっちゅうシステム開発部の階へ彼女が現れるので何度も目撃している。
「知っているなら…」杉村君が困惑した声で呟く。
「彼女さんとの仲を邪魔しようとか、そんなんじゃないの。ただ、知ってもらいたかっただけ。ただの自己満足。ごめんね」
冷静に話しているつもりでも私の膝は震えていたので、ゆっくり隣のデスクの椅子に座った。
そう、仲を引き裂くなんてとんでもない。
何故なら私は「彼女を好きな杉村君」に恋をしてしまったのだから。
実は私、少し前まで「好きな人がいない歴」と「彼氏いない歴」と「年齢」が等しかったのだ。
一応『大井システムズ(株)の高嶺の花』と言われている私。
多少は美人なのだと思う。
私に告白してきた男性は入社してからの4年間で…本社勤務の方だけでも15人くらい?23歳の一昨年がピークだったかな。
私は恋愛がしたかった。
きゅっと胸が締め付けられてしまうような、切ない恋心、というものをしてみたかった。
恋も知らないままとりあえずお付き合い、なんてしたくない。
だけど、25歳の今までずっと、ときめく相手に出会えていなかった。
そして全ての告白を丁重にお断りし続けた結果、『高嶺の花』という称号を得てしまったわけだ。
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