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奥さんからは、生前のシゲさんのコレクションについての相談だった。
シゲさんは自身の書斎部屋に多数の雑誌や文庫本、それに音楽CDなどを蓄えていた。それらの処置について、シゲさんは遺言を遺していた。
処分については全て任せるが。CDだけではなく、雑誌や本についても大滝町にある中古レコード店『本町ストア二号店』に相談すること。
カモミール── 神入 光という金髪の店長は、必ず俺の葬儀に来るはずだ。神入さんにそのことを伝えてほしい。
死期が近いことを覚悟した時、シゲさんがそう言い遺したと奥さんが伝えてくれた。
「なぁ、あの人。本当にシゲさんの奥さんなのか?」
俺の話が一段落した頃に、不意にリュウが口走った。
「…… どーゆー意味だ?」
「ゴメン…… 自惚れているだけなのかも知れないけど」
新しいジョッキに手を伸ばしてから、リュウが続ける。
「俺達『ひまわり』の地元のファン── 俺とかセージの古くからの知り合いってさ。家族揃ってイベントとかライブに来てくれる人が多いじゃん。
時が流れるたびに。ああ、アイツ結婚したんだ、とか。あそこん家のあの子、あんなに大きくなったんだ、とか。
知り合いだけじゃなくて、その知り合いの家族の変化も目にして来たし。
奥さんとか旦那さんとかお子さんとか。家族が増えるたびに俺達のファンも増えているみたいで嬉しいんだけど。
思い返してみると。シゲさんって終始ずっと独りで来てたよな、って思って。セージですら、奥さんやお子さん達に今日初めて会ったんだろ?
ハコでのライブならまだしも。祭りなんかの休日の屋外イベントだったら、家族を連れて来ても良さそうじゃないか」
リュウの意見に、セージが何度も頷く。
「確かにそうかも知れないけど。そこはホラ。家庭の事情は人それぞれだから」
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