Case 6-2:彼女の島 English Ver.

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「正直言って。俺は生前のお父さんと、それほど深い仲ではなかった。と、思っていたから、お通夜の時のお香典も他人行儀な金額だったんだよね。  でもお父さんは、俺が思っていたよりも俺のことを信用してくれるようなだと思ってくれていたみたいだから。  そのことに気付いちゃったから、友達価格としてお香典の追加分。これでも足りないくらいだよ」  そんな冗談を言うと、実花ちゃんはポーチから手を放して笑顔を見せてくれる。 「そう言えば…… 父からよく曲は聴かされていたのですけど。私、『ひまわり』のライブって生で観たことがないんですよね。今度のライブって、いつですか?」  その問いかけに、俺とマリーちゃんは見つめ合って固まってしまった。 「えっと…… 横須賀では予定がなくて…… 藤沢のライブハウスでのタイバンなら決まっているけど……」 「いつですか?」 「再来週の土曜日。でも藤沢で、しかも夜のライブハウスだよ」 「行っちゃダメですか?」 「ダメじゃないけど…… 未成年の女の子が独りで?」 「18歳は立派な成人です」 「でも、お酒は飲めないでしょ」 「飲みませんもん。場所ってどこですか?」  実花ちゃんの強い押しに、俺はマリーちゃんに救いの視線を送る。 「あのね、実花ちゃん…… 『ひまわり』のホームページに情報が載ってるから、本当に来たいのだったら見てみて。  『横須賀』スペース、平仮名で『ひまわり』で検索すれば出て来るから。  でも本当に来るのだったら、その前に私に連絡を頂戴。それが約束」  そう言ってマリーちゃんは立ち上がってカウンターに向かうと、置いてある名刺サイズの店のカードの裏に自分の携帯番号を書いて実花ちゃんに向ける。 「はい。お約束します、必ず」  実花ちゃんは拝むようにして、マリーちゃんの携帯番号が記された店のカードを受け取りながら言う。  あのシゲさんの大切な忘れ形見だ。もしものことがあっては困る。もし本当に実花ちゃんが独りで来るようなことになったら、セージに相談してみよう。
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