Case 6-2:彼女の島 English Ver.

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「あの大きな一軒家でひとり暮らしなんて…… 寂しそうだし、大変じゃない?」  俺はふとした疑問を実花ちゃんにぶつけてみた。 「え?シゲさんの家って、そんなに大きいの?」  やや食い気味にマリーちゃんが訊ねてくる。見ればカウンターの向こうで、いも子ちゃんも興味津々な様子だ。 「うん。立派なお宅だよ。家の中もそうだけど、庭も広くて。あれ、芝生じゃなくて『クラピア』だよねぇ、イワダレソウの新種の」 「え?お詳しいですね、店長さん」 「まぁ…… ガーデニングには興味があるし……」  将来、温室の管理を任されることを想像したら…… ハーブや観葉植物の知識が欲しくなったなんて、マリーちゃんの前では言えない。 「あのクラピアや庭木は、父と私の『作品』なんです」 「そっか…… 実花ちゃんもお世話をしていたんだね。お母さんと妹さんは?」  俺の問いかけに、実花ちゃんは俯いて静かに首を横に振る。 「は、まったく興味を示しません。水をあげて、って言っても。やり方がわからない。って言って断るくらいで」 「え?お花に水をあげられない人なんて、いるの?」  独りであんなに大きな温室の管理をしているマリーちゃん。それにハーブなどの植物は、直接彼女の生業に繋がるし。  植物の管理ができない── 人がいることを本当に驚いているようだ。 「マリーさん…… そんなことで驚いていたら、あの2人と一緒に住むことなんてできませんよ。まず、挨拶をしないのですから。は」  一瞬、実花ちゃんの言うその言葉の意味がよく理解できなかった。見れば隣のマリーちゃんもカウンターのいも子ちゃんも、口をポカンと開けている。  挨拶のできない子供を放っておく親なんているのか?と、みんなが思っているみたいだ。
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