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「あの大きな一軒家でひとり暮らしなんて…… 寂しそうだし、大変じゃない?」
俺はふとした疑問を実花ちゃんにぶつけてみた。
「え?シゲさんの家って、そんなに大きいの?」
やや食い気味にマリーちゃんが訊ねてくる。見ればカウンターの向こうで、いも子ちゃんも興味津々な様子だ。
「うん。立派なお宅だよ。家の中もそうだけど、庭も広くて。あれ、芝生じゃなくて『クラピア』だよねぇ、イワダレソウの新種の」
「え?お詳しいですね、店長さん」
「まぁ…… ガーデニングには興味があるし……」
将来、あの温室の管理を任されることを想像したら…… ハーブや観葉植物の知識が欲しくなったなんて、マリーちゃんの前では言えない。
「あのクラピアや庭木は、父と私の『作品』なんです」
「そっか…… 実花ちゃんもお世話をしていたんだね。お母さんと妹さんは?」
俺の問いかけに、実花ちゃんは俯いて静かに首を横に振る。
「あの人達は、まったく興味を示しません。水をあげて、って言っても。やり方がわからない。って言って断るくらいで」
「え?お花に水をあげられない人なんて、いるの?」
独りであんなに大きな温室の管理をしているマリーちゃん。それにハーブなどの植物は、直接彼女の生業に繋がるし。
植物の管理ができない── 水のやり方もわからない人がいることを本当に驚いているようだ。
「マリーさん…… そんなことで驚いていたら、あの2人と一緒に住むことなんてできませんよ。まず、挨拶をしないのですから。あの人達は」
一瞬、実花ちゃんの言うその言葉の意味がよく理解できなかった。見れば隣のマリーちゃんもカウンターのいも子ちゃんも、口をポカンと開けている。
挨拶のできない子供を放っておく親なんているのか?と、みんなが思っているみたいだ。
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