Case 6-2:彼女の島 English Ver.

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「まずは…… えっと、何からお話ししようかな…… お料理から行きましょうか。  さっきもお話ししました、今度が住むことになる実家がある場所なんですけど。  なんでも『脳卒中』の発生率だか死亡率だかが、全都道府県の中でトップらしくて。お料理の味付けが、濃いことで有名な場所らしいんですよ。  なので母の料理も例外にあらず。何を作っても味が濃くて、油でギトギトなんです。  こう言ってはナンですが…… 父の病気の一因は、そんな母の料理の味付けにあったのではないか、とさえ思っています。  母と妹は舌が麻痺してしまっているみたいで。美味しい美味しいと言って平気でバクバク食べていましたけど。  私の口には、どうも合わなくて。おかず一口でご飯を一杯食べられるくらいでした。  だから、ほとんどおかずを口にしないうちにお腹いっぱいになっちゃって。  あ、そうそう。ご飯と言えば。ウチはご飯も美味しくないんですよ。  母方の実家は農家で田んぼも持っているので。お米は絶え間なく母方の実家から送られてきていて、お米を買ったことがないくらいですけど。  きっと、お祖父(じい)ちゃんが作ったお米はすごく美味しいはずなんですよ。  でも…… ウチには炊飯器がなくて、IHのコンロに『炊飯』というメニューがあるので、それでお鍋で炊いているのですけど。  まあ、炊飯器でもそうなのでしょうけど。炊き上がった── も終わった段階、要は食べ頃の状態でピピッと鳴るはずじゃないですか。  でも母は。それから蒸らさないと食べられないって、頑なに信じているみたいで。  食卓に並ぶ頃には冷めて、カッピカピのスッカスカになってしまっているんです。  なので私は。そのご飯さえもお味噌汁やお茶で、口の中で潤いを戻すようにして食べなければいけないんです。  父もやっぱりそう思っていたみたいで。私を含め、家族はみんな父が少食だと思っていたくらいです。  でも私、ある日に見ちゃったんですよね。夕食が終わった後の、夜のコンビニで。
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