Case 6-2:彼女の島 English Ver.

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 俺達── マリーちゃんもいも子ちゃんも、あまり意味が分かっていない様子なので。実花ちゃんは補足の説明をしてくれる。 「えっと…… よく『1円安い玉子を買うために、1km離れた隣町のスーパーに30分かけて行く』ってことを聞きませんか?  この行動が得しているのか、損しているのか、物理的に検証してみましょう。  まずは距離の問題です。母は買い物に、ウチの自動車を使って行くわけですから。ウチの車は軽油を使って1Lあたり約10km走ります。  母の運転は荒いので、もう少し燃費は悪くなりますが。  1km離れたスーパーへ行くには、1Lあたり150円する軽油を使います。  だからスーパーまで消費する軽油は0.1L、15円の金額を要します。なので、そのスーパーで15円以上安い買い物をしないと元が取れないわけです。  これは可能だと思うんです。玉子だけじゃなくて、『あ、お醤油の特売やってる!』とか、『こっちのほうがお菓子が安い!』とか。15円くらい、すぐに得ができます。  今度は時間の問題です。時間をお金に換算するのは、とても難しいのですけど。ここでは『最低賃金』を指標に考えたいと思います。  1時間の値段を1,200円と仮定するわけです。買い物に費やしている時間を、もし働いていたら1,200円稼げる、という意味で。  賢くない倹約家が一番に見落としがちなのが、この時間の金額換算です。  『最低賃金』が1,200円の場合、1時間に1,200円── 3,600秒で1,200円を稼ぐことが可能です。約分すると、3秒で1円稼げるんです。  逆に考えると。1円安い玉子を買いに行くのに費やせる時間は、たった3秒なんです。  隣町のスーパーへ30分かけて行くなら600円── 車の燃料代と合わせて、合計615円得しなければ、本当の得にはならないはずです。  母はいったい今まで、この行動のせいでどれだけの時間と費用の無駄遣いをしていたのでしょうか」
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