Case 6-2:彼女の島 English Ver.

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 ライブ前はどこか他人行儀だった実花ちゃんも、かなり俺達と打ち解けたと思う。  大船駅で降りてロックまる出しな中年3人だけに囲まれるようになっても、実花ちゃんは積極的に俺達と会話を続けようとしてくれている。  まわりから見たら俺達、妙な集団だろうな。  今日のライブで実花ちゃんに、俺達『ひまわり』の魂が伝わったようだ。いや、伝わったのは俺達の魂ではなく、シゲさんの思いなのかも知れない。  ただ言えることは。現代に流行しているようなを無視した人達が、架空(ヴァーチャル)な世界でしているような音楽ではなく。  俺達のような生身の人間が奏でる、泥臭い音楽を。父から娘へバトンタッチされた瞬間を見れたような気がする。  だって。今日の模様をあんなに楽しそうに話したり、次のライブの予定を()いてくれたりしているんだよ、実花ちゃんは。  絶滅に瀕しながら細々とかも知れないけど。俺達の音楽はこうして受け継がれて行くんだと実感できたような気がする。  いつかシゲさんがデビュー当時からファンだった女性シンガーと共演する機会が訪れても。俺達『ひまわり』は胸を張って自分達の音楽を披露できると思うので。  いつかその日を待っていて欲しいと思う。  ね、シゲさん。  セージが連絡を入れてくれていたのか。実花ちゃんの最寄駅である衣笠駅には、セージの奥さんが車で迎えに来ていてくれた。  俺とリュウはギターやベースが入るケースと、エフェクターやシールドなどを突っ込んだアタッシュを後部座席の後ろに積み。  実花ちゃんを助手席に座らせたため、男3人が並んで後部座席に並ばなければいけないので、窮屈で仕方がない。  やっぱ3列シートのミニバンが必要だな。と言うセージに、もっと売れたらね。と返す奥さんは流石(さすが)だ。
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