interlude

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「な…… ば、馬鹿野郎!遠征に来たらな、『ひまわり』は4人組なんだよ」 「なによそれ。どーせ男ばっかりでイカガワシイお店にでも行こうとしてたんでしょ」  だから、俺を睨むなよ……  さっきまでは誠治に向けられていた狂気の視線が、今は自分に向けられていることに気付いた光は溜め息を()いてから続ける。 「早く行こうゼ。みんな待たせてるし」  光は誠治と真理恵の腰に手を置いて押し出すように、既にホテルの外に出ている他の3人の元へと進める。 「まずは主催のバンドが用意してくれた打上げ── 普通の居酒屋だよ。イカガワシイ店にだったら、その後勝手に行ってくれ。俺は明日早いから帰って寝る」  先にホテルを出ていた3人に追い着いたのを確かめるようにしてから、男性陣に向けているような言葉を真理恵を見ながら言う光。 「そんなこと言わないで、ヒカリも行こうゼ」  冷やかすように剛が言う。すると光は剛の元へ歩み寄り、肩を組みながら凄みの利いた低い声で言う。 「おめーも行くんだろ?ゴー。寝坊したら置いて行くからな」 「…… はい。すみませんでした」  しおらしく縮こまってしまう剛の姿を、光を含めた全員で笑う。脱退こそしているものの、剛は今でも『ひまわり』を和ませてくれるマスコットボーイだ。  ライブの翌日── 明日は大阪観光でもしてゆっくり帰ろうゼ。と話していた『ひまわり』の面々であるが。光は既に翌日に予定を入れていた。  ロックバンド『ひまわり』でギターを担当する傍ら、横須賀にある中古レコード店『本町ストア二号店』の店長を務める光。  その店も参加している通販サイトで頻繁に売買をしてくれる常連客が香川県にいることを知っていたので、これを機に訪れることにしたのだ。  俺、前に香川に住んでいたことあるゼ。案内するよ。と、申し出てくれた剛と2人で、明日は朝早い高速バスで四国に渡る予定だ。
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