ホントの志望理由

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『一級建築士になりたい』っていう僕の夢は所詮、通過点でしかない。  僕の本当の夢は『君の願いをすべて叶えられる男になりたい』ってこと。  君が成流大学への合格を望むなら、僕は何としても君の面接スキルを合格レベルにまで引き上げてやらなければならない。 「よし。絶対面接通るように、今から猛特訓するよ! まずはあなたの特技を教えてください」 「計量カップを使わずに濃縮還元のめんつゆをちょうどいい濃さに薄められます!」 「あなたの尊敬する人は誰ですか? またその理由は?」 「尊敬しているのは母です。なぜならカレーの匂いを嗅いだだけでアウトかセーフかわかるからです。ちなみに母がアウトだといったカレーを『火を通したら大丈夫』と言って食べた私と父は三日間寝込みました」 「あなたのウィークポイントを教えてください」 「脇腹です」 ……これ、受験までになんとかなるものなのか?  僕は眩しい笑顔で珍回答を連発する渚を見ながら『君の願いをすべて叶える男』のイメージ像がガラガラと崩れていく音を聞いた。
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