7/10
前へ
/385ページ
次へ
 ふたりは刑事だった。  場所は渋谷の繁華街を離れ、宇田川町の隠れ家的カフェが点在する、落ち着いた雰囲気のエリアである。  時刻は早朝だった。  中では鑑識のドローンがまだ隅の方で作業をしていた。「終わった」というのは主だった鑑識作業が終わったという意味だったようだ。  宇堂たちは飛び交うドローンの邪魔にならないように歩いた。  よく昔の刑事ドラマで鑑識作業をする中、いの一番に刑事が駆けつけるシーンが描かれることがあるが、あれはもはや過去のものとなっていた。まず現場に入るのは鑑識班とその鑑識班が操作するドローンだ。自白よりも科学捜査による客観的証拠が重要視される現代において、刑事が事件現場を見るのは一番最後なのだ。  特に近年VR技術の導入で、ドローンに搭載した3Dレーザースキャナによる現場保存が可能になった。見たければ、いつでもVRゴーグルを付けて事件現場を見ることができるようになったため、わざわざ鑑識の邪魔をしに現場に行く必要はなくなっていた。  そのためか今日も刑事課で現場に来ていたのは宇堂と柚だけだった。
/385ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加