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「なにをだ?」  空を見上げて物思いにふけっている様子だった宇堂は振り返って不愉快そうに聞き返した。 「捜査ですよ。これだけ調べても何も出てこない。やっぱりサイクロプスの判断通り、被害者の死に事件性はなかったんですよ」 「そうかも知れないな」 「だったら!」 「だが私は納得していない。白か黒かハッキリするまでは捜査を続ける。グレーはありえない」 「そんなことをしていたらキリがないですよ!」  だいたい今どきこんなに聞き込みをすることはない。情報の収集はもっぱらデジタルだ。SNSや買い物情報などのビッグデータから被害者や容疑者の生活を割り出すことが主流となっている。一般への情報提供の呼びかけもネットへと移行していた。そっちの方が効率的だった。それなのに、旧態依然とした方法で足を使って情報を集めていることにうんざりしていた。 「コンピュータ上のデータは信用できない。キリがなくても情報は自分の足で地道に掴むものだ」 「はあ……」  言い切る宇堂に、柚はため息をついていた。
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