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「それで自分の師である霧尾教授の名を利用してテロ支援国家と取り引きをしたんですね?」 「利用した? 違いますね。先に向こうの方が僕を利用したんです」 「え?」 「僕は長年、霧尾教授が発表する論文のゴーストライターでした。あの人が天才だったのは若かった時だけです。歳を取ってからは科学者としての閃きも衰え、ただ〝隠れた変数〟に執着しているだけの偏屈な男でした。彼は研究生だった僕に論文の下書きをするように命じて、実はそれをそのまま手書きに直して発表していたんです。私が書いた霧尾教授の論文は一定の評価を得ました。その中のひとつが〝パノプティコン計画〟でした」 「やっぱり……!!」  パノプティコン計画=全方位監視型未来予想システム。  やはり霧尾教授ではなく秋堵が立案したものだった。  想定していたこととはいえ、あらためて本人の口から事実を告げられ、柚は戦慄した。
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