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「そんなある日、ある投資家から接触がありました。いくらでも研究費を出すので〝パノプティコン計画〟の実現に向けて研究と実証実験を進めてくれ、というものでした」
「ある投資家?」
「もちろん、表向きです。実際はご存知のようにテロ支援国家から派遣されたエージェントでした。独裁者に研究が悪用されることは明らかです。そこで霧尾教授は研究費の申し出を断ってしまいました」
「『断ってしまいました』?」
「そうです。霧尾教授は断ってしまったのです! 人の論文は盗むのに、そういう倫理観はあったのです!」
「で、でもお金を受け取ったら研究を悪用されるんですよ。当然でしょう?」
「研究が続けられるなら関係ありません」
「!?」
「〝隠れた変数〟の研究は、誰にも相手にされない研究でした。世の中が量子力学をもてはやす時代に〝隠れた変数〟の研究に研究費なんて出ません。このままでは研究が続けられない。切羽詰まっていたのです」
「で、でも!」
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