8/9

40人が本棚に入れています
本棚に追加
/385ページ
「僕はなんとしても研究を完成させたかった。そこで気づいたのです。今度は僕が〝霧尾教授〟という名前を利用する番だとーー」 「?!」 「僕は『霧尾教授』として、顔を見せずに相手と接触して研究費を受け取り、〝パノプティコン計画〟を続けました。もちろん、テロ支援国家に大事な研究結果を渡すつもりはありません。パノプティコン計画は本来の計画通り、人類の幸せな未来を約束するために、安定した予測可能な世界の構築のために使われるべきです。そこで僕は『霧尾教授』名義で資金援助を受けながら、最後にひと芝居を打ったのです」 「それってまさか……」 「そうです。〝霧尾教授の死〟です」 「じゃあ、あの時の爆弾も!」 「はい、僕が仕掛けました」 「霧尾教授が死に、その研究は爆弾によって失われたことにする計画でした。柚さんと出会ったあの時、僕は爆弾を仕掛けた旧13号棟に人が入っていかないように見張っていたんです」 「それで入り口で私に声をかけた?」 「ええ、あのタイミングで柚さんが訪ねてきたのは計算外でしたが、それでも誤差の範囲内でした。せっかくならパノプティコン計画の資料が完全に消滅した証人になってもらおうと逆に招き入れたんです」
/385ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加