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廊下を走った。
研究棟の長い廊下には柚が走る足音と息切れの声だけが残響を伴って響く。
廊下は薄暗く静かだった。
柚はすぐに「おかしい」と思った。
人の気配がない。
本来ならこの研究棟にはたくさんの研究員がいるはずだった。だが誰ともすれ違わないのだ。
柚は近くの研究室のドアノブに手をかけた。
中になら誰かいるかも知れない。しかしドアは開かなかった。ロックがかかっている。
「誰かいませんか!」
柚は必死にドアを叩いた。
「柚さぁん、無駄だよ。今日は電気設備の点検だって言って休館の情報を流してあるから。研究棟には誰もいない。仮に中に誰かが残っていたとしても、研究棟の設備はすべてこちらで掌握している。ドアには電子ロックがかかっていて、廊下には出てこれないし、廊下にある監視カメラの映像もリアルタイムで改ざんしているので警備会社が助けに来ることもないよ」
廊下を悠然とやって来る秋堵の声が廊下の奥から聞こえてきた。
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