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「ハアハア……」  柚は息を切らす。目が回りそうだ。  それでも足は止めない。背後の秋堵に追いつかれるわけにはいかない。    5階……、4階……、  3階……、2階……、   「あ、あともう少し……」  研究棟の外へ!  1階に降り立った柚は研究棟の外に出ようとした。  だがそこに立ちはだかる人影があった。  秋堵だ。  秋堵は息切れひとつせずに悠然と扉の前に立っていた。 「そんな、どうして?!」 「どうしてって、エレベータを使って降りてきたんですよ」  秋堵は腹立たしいほど澄ました顔で言った。  柚は悟った。秋堵が研究棟を管理しているコンピュータをハッキングしてエレベータを止めたのだ。当然、自分が乗るときは動くようにすることができる。 「……くっ」 「柚さん、どうして理解してくれないのですか? この世界は決定論になった方が幸せです。さあ、僕と一緒に行きましょう」  秋堵は柚に手を差し伸べる。 「……」  しかし柚は首を横に振った。
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