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 午後の聞き込みも手分けして回ることとなった。  すでに被害者と関係が深かった人への聞き込みは終わっている。あとは周辺住民への聞き込みだった。しかしそれすらも現場周辺は終わっており、範囲を広げて渋谷の繁華街から離れた静かな住宅街にまで来ていた。  柚は公園の広場で子供たちを遊ばせながら井戸端会議をしていた主婦たちに聞き込みをしていた。 「そうですか。見たことないですか」  被害者サトウシンヤの顔写真を見せるが「見た」という者はいない。そりゃそうだ。これはあまりに効率が悪すぎる。  柚は主婦たちに礼を行って離れた。  もう、うんざりだった。  課長に頼んで宇堂とのペアを解消して貰おうか?  そんなことを考えながら歩いていると、視界の隅に見覚えのある男が歩いているのに気づいた。  昨日、繁華街の方で聞き込みをした赤髪のソフトモヒカン男だった。繁華街だけを縄張りにしているチンピラだと思っていたが、こんな住宅街の方にまで何の用だろう?  気になってよく見ると、モヒカン男の隣にはスーツ姿の男がいた。  そっちにも見覚えがあった。
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