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「……!!」  盗み聞きした会話からだいたいの真相が分かってきた。  矢崎の経営する会員制バー『バタフライ』はセレブ客向けに違法薬物を提供していたのだ。  その薬物は、裏社会に顔が利くサトウから仕入れていたようだ。  これは大変だ。  宇堂センパイに伝えないと!  柚は二人に気づかれぬように静かに踵を返そうとする。  しかし足元に枯れ枝が落ちていることに気づかなかった。踏んでしまい、バキッと思いの外、大きな音がする。  ーーしまった!  一歩踏み出した体勢のまま、冷や汗が一気に噴き出た。  気づかれていないことを祈りながら振り返る。 「……」 「……」  祈りも虚しくモヒカン男と矢崎はこちらを見ていた。  目があって、お互いにしばしの沈黙。気まずい空気が流れる。  と、静寂を破ってモヒカン男が声を上げた。
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