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 矢崎オーナーは柚が声を上げられなくなったのを確認すると扉を開けた。 「なんのようですか?」 「ちょっと話があってね」 「警察にはもう話したじゃないですか。もうすぐ営業時間です。お客さんが来るのでやめてくれますか?」 「すまんな。だがこっちも緊急なんだ」 「緊急?」  察しはついてるがとぼけて聞き返す。 「実は私の相棒の刑事が行方不明でね。所持いていた端末(タブレット)のGPSを調べたところ、このあたりで信号が途切れているんだ」 「……」  矢崎オーナーの額に汗が滲んだ。  端末(タブレット)については柚を店に運んでから気づいた。慌てて電源を切ったが、GPS情報は伝わってしまっていたようだ。 「そ、そうですか。それは大変ですね。確かに若い刑事さんが聞き込みに来ましたね。もう一度、色々と聞きたいと言われまして。サトシンのことを色々と話しました」  GPS信号がここで途絶えている以上、来ていないと言えば嘘になる。じゃあ、店内を調べさせてくれと言われるかも知れない。そこで矢崎は柚がここに来たこと自体は否定しなかった。何かあったのなら、ここに来た後ということにしたかった。
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