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「そうか。ここに聞き込みにきていたのか……。ありがとう、足取りが掴めてきたよ」  宇堂はすんなり納得して去っていった。  矢崎は顔を伏せ、ほくそ笑む顔を隠しながら扉を閉めた。しっかりと鍵もかける。うまく誤魔化せたようだ。これで当分、ここには来ないだろう。  そしてもうひとつ、重要なことが分かった。  ーー警察はまだ何も知らない……。  それはつまり柚の口さえ封じてしまえばいいということだった。    ※ ※ ※  店を後にした宇堂は考えていた。  ケータイのGPSはバーで途切れている。  明らかにバーが怪しい。  しかし確固たる証拠はない。  令状もなく店に踏み込むことはできなかった。  オーナーの言っていた通り、一人で聞き込みを続けているのだろうか?  しかし宇堂は何かが引っかかっていた。  自分でもそれが何なのか分からない。  この違和感はなんだろう?  宇堂は足を止めて、バーの入っている雑居ビルを振り返った。  そして気づいた。  ——サトシン?
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