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「ところで通り魔に殺された息子さんのことですが……。どこかで生きていると本当に信じているのですか?」
「聞いたのか」
「すいません」
「いいんだ。噂になっているのは知っている。隠すつもりもない」
宇堂はそう言って一度大きく息を吸ってから話し始めた。
「あの子は私の腕の中で息を引き取った。確かに私は確認した。だから生きているとは思っていない。でもな、……消えたんだ」
「え?」
「あのあと、あの子を……、シュンを乗せた救急車が……救急車ごと……」
「……?!」
※ ※ ※
警視庁捜査支援分析センター・Qルーム奥室。
部屋の中央には上から吊り下げられた円柱状のメタリックな構造物があった。高さ2メートルほど。全体として金色をしている。キラキラと輝きを放ち、巨大なシャンデリアのようだった。
これが量子コンピュータAI『サイクロプス』の本体だ。
量子状態を維持するため、中は限りなく絶対零度に近い温度まで冷却されており、振動の影響も受けないような作りなっていた。
添島はその前に立ち、コンソールを操作して防犯カメラ映像の解析を行なっていた。
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