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「坊や、何色がいいかな?」
風船売りのおじさんが訊いた。
私は財布を出しながら、聞くまでもないと思った。
シュンは青が好きなのだ。青を選ぶにに決まっている。
ところがシュンは「赤がいい!」と元気よく答えた。
私は少し戸惑った。
いつの間に青ではなく赤色が好きになったのだろう?
疑問に思いながらも私はお金を払った。シュンは赤い風船を受け取った。
私はシュンと手を繋いで歩きながら、なんで珍しく赤を選んだのか訊ねようと思った。
だがそのとき、パァンという破裂音と共に赤い風船が割れてしまった。
「あ……」
シュンは弱々しい声を上げ、哀しそうに地面に落ちた赤い風船の残骸を見下ろした。何かに当たった訳でもない。おそらく不良品だったのだろう。
さすがに可哀想だった。
「ちょっとここで待ってなさい。同じのをもうひとつ買ってくる」
私はそう言って、肩を落とすシュンをその場に残してもう一度風船売りの元へ向かった。
それがいけなかった。
私が再び風船売りから風船を買おうとしたとき、突然、背後で悲鳴が上がった。
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