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もしや、
「さっき別れたばかりだが、お前が恋しくて、つい、そんな風に訊いてしまった」
などと歯の浮くようなセリフを言うおつもりですかっ、と思って見つめてみたが、ジンはなにも言わない。
ちょっと困ったような顔で、アローナを眺めている。
まあ、さっきまで貢ぎ物の女だと思っていた娘が、あれよあれよと言う間に妃となったわけだから。
落ち着いて考えてみたら、なんだかんだで複雑なのかな。
私もですよ、ジン様、と心の中で思ったとき、ジンが側に腰掛けてきた。
逃げかけるアローナの腕をつかんで言う。
「なんだかんだで、結局、私たちはこうなる運命だったのだ。
諦めろ」
もう逃げられない雰囲気に、焦ったアローナは慌てて言った。
「あっ、あのですねっ。
実は私、毒婦なんです」
「……どくふ?」
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