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「あっ、あのですねっ。
実は私、毒婦なんです」
どーくーふー、と可愛らしい顔でアローナが言うので、ジンは堪えきれずに吹き出していた。
なにが毒婦だ。
アッサンドラの王は掌中の珠のように可愛がって育てた姫を泣く泣くこの国に嫁がせたと聞いている。
そんな娘を毒に浸して育てているわけがないではないか。
アローナから常に放たれているのは毒などという禍々しいものではない。
ミルク色の肌に艶やかな長い黒髪の彼女からは常にいい香りが漂っている。
赤ん坊の近くにいると感じるような、ホッとする香りだ。
まだ怯えたように自分を見上げているアローナの顔に笑ったジンは、
「まあいい。
今日はそのアサギマダラの話が面白かったから、許してやろう」
そう言って、今日のところは寝台からおりてやった。
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