私、毒婦なんです

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  「ジン様は王位を継がれて、すぐにお触れを出されました。  重い税を引き下げ、飢えていたものたちに食料庫から食料を分け与え、望めば誰でもどのような職種にでもつけるよう、命じられたのです」  朝、そんなことを誇らしげに語ってくれながら、髪を()いてくれるのは古参の侍女だ。  それは立派な王様だな、と思いながら、アローナは聞いていた。  開け放たれた窓からは心地よい風が入り込み、よく手入れのされた庭が見える。  部屋くらいの広さがある廊下に出ると、ちょうどアハトがこちらに向かって歩いてくるところだった。 「……アハト様」 とちょっと困りながら言うと、アハトもまた、微妙な感じにこちらを見る。 「しゃべれるようになったのですな」 「そうですね」  沈黙があった。 「……アッサンドラのアローナ姫だったのですな」 「そうですね」  二人で向かい合ったまま、また沈黙した。
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