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恐ろしい王様が支配する、戦と陰謀にまみれた強国だと聞いていたのに。
市民が圧政に苦しんでいる様子はなく、みな楽しげだ。
視線を馬車の中に戻すと、同じように外を見ていたアハトと目が合った。
なにか言わねばと思ったが、声は出ない。
仕方なく、アローナは身振り手振りと顔つきで、
「素敵な街ですね」
と伝えてみた。
アハトは深く頷き、
「わかった。
買ってやろう」
と言って、馬車を止めさせ、屋台で菓子を買ってこさせた。
いや、違うんだが……。
だが、意外にいい人だ、とピンク色の甘いなにかでコーティングしてある渦巻状の菓子を手渡されて思う。
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