私、毒婦なんです

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「あのまま何処へともなく、売られていてもしょうがなかったわけですから。  そう考えると、此処に連れてきてくださった恩人のような気もしているのです。  そういえば、屋台でお菓子も買っていただいたことですしね」  ありがとうございます、とつい、笑いかけると、アハトは困惑したような顔をし、 「いや、礼を言われても困りますな。  私はただ、遊郭に並んでいた娘の一人を買っただけ。  八百屋の店先で、じゃがいもひょいとカゴに入れて買ったのと同じですからな」 と言ってくる。 「アハト様、八百屋なんて行かれるんですか?」  そう思わず問うたとき、 「今の話で気になるの、そこだけですか」 と言う声がした。  振り向くと、フェルナンが立っていた。  アローナはちょっと困った顔で二人を見る。  フェルナンを脅しているのはアハトだという話を思い出したからだ。
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