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……握ってきませんね。
どうしたら、いいんでしょう、この右手。
そう不安がりながら、思わず、握り締めてしまっていた、ジン側にある右手をゆるめてみる。
……やっぱり、握ってきませんね。
こ、このまま、どうしたら、と二人で膠着状態になっていたそのとき、
何処からともなく、矢が飛んできた。
はっ、と気配を感じたジンがアローナをかばうように、抱いて避ける。
「矢に毒を塗って射殺す!?」
と昼間の話を思い出し、アローナは思わず叫んでいたが、ジンは寝台に刺さった矢の矢尻を確認し、
「なにも塗ってないようだが」
と呟いていた。
アローナを片腕に抱いたまま、ジンは矢が飛んできた方角を見る。
アローナが見上げたときには、なんの変哲もない天井だったが、ジンはそちらを見て、笑って言った。
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