今宵の演目はなんだ

17/35
前へ
/358ページ
次へ
 あまり面識のないジン様より、遠くにいるアッサンドラの王より。  今にも現れて、後ろからどついてきそうなエン様の方が怖い、とフウは思っていた。 「どちらに行かれるのです?」 とフウは少し強めに訊いてみた。  エンが姫に対して、いつもそうしているように。  このままひとりでアローナを行かせて、また行方不明にでもなられては、たまらないからだ。 「……何処か良いところですか?」 とアローナの表情を窺いながら、フウは訊いてみた。  エンが姫はすぐ顔に出る、と言っていたからだ。  すると、アローナは、うーんと小首を傾げ、 「男性にとっては良いところかもね。  でも、若い娘が行くところではないわ。  付いてきたら危ないわよ」 と言う。 「じゃあ、姫様も行かないでください。  と言いますか、このまま姫様を行かせて、姫様になにかあったら、私はきっと、エン様に死ぬより恐ろしい目に遭わされます。  それくらいなら今、行って、ひどい目に遭った方がマシです」 とつい、どんだけエンが怖いんだ、と思うようなことを言ってしまう。  だが、エンの恐ろしさを知るアローナには、こちらの恐怖がよく伝わったようだった。  アローナが、えー? 困ったなあ、という顔をしたとき、フェルナンが現れた。
/358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1218人が本棚に入れています
本棚に追加