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むせ返るような花の香り。
いや、それに混じるスパイシーで野性的なこの香りはなんだろう。
目を覚ましたアローナは眠っている自分の側に横たわり、頬杖をついてこちらを見ている黒髪の美しい男に気がついた。
長い黒髪をひとつにまとめたその男は、その髪と同じ色の鋭い目をしていた。
ひーっ、と悲鳴を上げたつもりだったが、声が出ない。
そんなアローナを見て男は呆れたように言う。
「お前がアハトが連れてきた娼館の女か。
王の褥で爆睡しとはたいしたものだな」
アローナは慌てて、若き王から遠ざかる。
その恥じらうような仕草を見て、男は、ほう、と驚いたように言った。
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