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「そんなことありませんよ。
結構楽しんでらっしゃいましたよ、お父様」
「……なんだって?」
とジンが訊き返してきた。
「お聞きになっていらっしゃいませんか?
レオ様が娼館にいらっしゃって。
他の娘だと無礼があったら殺されるかもしれないというので、私が酒の席につかされました」
どうやら、レオが娼館にいたことをジンに言ったものかどうか迷ったアハトが護衛たちに口止めしていたようだった。
だが、ジンはそもそも、あの父親がおとなしく幽閉されているわけもないと思っていたらしく、特に気にしている風にもなかった。
気になるのは別のことのようだった。
「お前が父にカーヌーンを弾いてみせたのか」
「はい」
「……父は金を返せと、娼館の女たちに迫ってなかったか」
「だから、面白がってらっしゃいましたよ。
お父様が弾かれるカーヌーンで、私が歌を歌ったり」
「ずいぶんと楽しそうではないか……」
といじけるジンにアローナは言った。
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