1216人が本棚に入れています
本棚に追加
/358ページ
媚もなにも一切なく、くかーっと気持ちよそうにアローナは寝ている。
なにかホッとする顔なんだよな。
陰謀とか策略とか、そんなものから、もっとも遠い場所にあるような。
だから、アローナの側にいるだけで、なにもせずとも結構幸せなんだが……。
そう思いながらも、ジンはアローナのその白く丸い額にそっと口づけてみた。
だが、額になにかが触れたからか。
アローナは寝ぼけたまま、猫が顔を洗うように、こしこしとおでこを擦りはじめる。
拭うなっ。
……しかし、このまま此処にいたら、朝まで、なにもしない自信はないな。
そうジンは思ったのだが。
出ようとした扉には鍵がかけられていた。
「こらーっ」
「今夜はそこでおやすみくださいーっ」
と扉の向こうからフェルナンが叫んでくる。
最初のコメントを投稿しよう!