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「相変わらず、呑気ですな」
と開口一番、アハトは機嫌を取ろうとしているはずのジンを罵ってしまった。
いかんいかん、つい……と咳払いしたあとで、アハトは若き王に忠告じみたことを言った。
「あの娼館に、ほんとうにレオ様は遊びに行かれていたのでしょうかね」
「どういう意味だ?」
と訊き返してくるジンに、
「あなた様のクーデターにより、この国を巡る情勢は大きく変化しました。
今こそ攻め滅ぼすチャンスだと思っている国もあれば。
関係性を改め、自分の国に有利な友好条約を結び直そうとしている国もあるかもしれません」
と言うと、ジンの顔つきが厳しくなる。
ジンはこう見えて、有能な王となるだろう。
だからこそ、あのレオが追われたわけだし。
自分が言っているようなことも、普段なら想定していると思うのだが。
今はちょっと……かなり、よそへ気が向いてしまい、腑抜けてしまっているのではという不安があった。
それも、自分が贈った貢ぎ物の姫によって。
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