娼館でなにか学んできたのか?

21/34

1216人が本棚に入れています
本棚に追加
/358ページ
   花咲き乱れる庭園の西洋式東屋(あずまや)、ガゼボでアローナはジンたちとお茶を飲んでいた。 「そうですか。  娼館にレオ様は情報を得に行ってらしたんですね」 とアローナは呟く。  脚付きの銀の器に盛られているのは、エンが焼いた焼き菓子だ。  例の鷹が届けてくれたのだ。  兄に誘拐されたが、元気にやっているようだ、と懐かしい味のする焼き菓子を頬張りながら、アローナは思う。  口に入れると、ほろりと(ほど)けるその焼き菓子は、透明な玻璃の器に入った花入りのお茶とよく合う味だった。  もうひとつ、とその焼き菓子を手にとると、アローナが座る白い石のベンチに止まっていた鷹が、アローナの肩をつついてきた。  アローナは掌に焼き菓子をひとつ置いて、鷹にやる。 「父は、なんのために情報を集めているのだろうか。  自分が返り咲くためか。  それとも、国のためなのか」 と独り言のように、ジンが呟く。  アローナはあの美しい娼館の中に並ぶ、締め切られたそれぞれの部屋を思い出しながら言った。
/358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1216人が本棚に入れています
本棚に追加