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花咲き乱れる庭園の西洋式東屋、ガゼボでアローナはジンたちとお茶を飲んでいた。
「そうですか。
娼館にレオ様は情報を得に行ってらしたんですね」
とアローナは呟く。
脚付きの銀の器に盛られているのは、エンが焼いた焼き菓子だ。
例の鷹が届けてくれたのだ。
兄に誘拐されたが、元気にやっているようだ、と懐かしい味のする焼き菓子を頬張りながら、アローナは思う。
口に入れると、ほろりと解けるその焼き菓子は、透明な玻璃の器に入った花入りのお茶とよく合う味だった。
もうひとつ、とその焼き菓子を手にとると、アローナが座る白い石のベンチに止まっていた鷹が、アローナの肩をつついてきた。
アローナは掌に焼き菓子をひとつ置いて、鷹にやる。
「父は、なんのために情報を集めているのだろうか。
自分が返り咲くためか。
それとも、国のためなのか」
と独り言のように、ジンが呟く。
アローナはあの美しい娼館の中に並ぶ、締め切られたそれぞれの部屋を思い出しながら言った。
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