娼館でなにか学んできたのか?

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「身を隠すのにいいから、あの娼館の中、密偵なんかもたくさん来てそうですよね。  でもまあ、かえって都合いいですかね」 とアローナが言うと、 「都合がいい?」 とジンたちが訊き返してくる。 「エメリア様たちを抱き込んで、さもジン様が素晴らしい王であるかのように、あそこで、みなに吹聴(ふいちょう)してもらうのです」 「……ジン様は、ほんとうに素晴らしい王ですからね」 と言うフェルナンに、わかってますよー、と適当に頷いたあとで、アローナは言った。 「そして、娼館に潜り込んでいるスパイを通じ、新しい王が如何に知略に富み、民の心を掌握しているかを諸国に知らしめるのですっ」 「お前が一番、謀略にまみれている気がしてきたぞ……」 と半眼の目でアローナを見ながら、ジンが言う。 「情報戦を制すれば、(いくさ)も回避できるかもしれません。  平和のためです」  そうアローナが言い切ったとき、 「健康のためなら死んでもいい人みたいに。  平和のためなら、なにしてもいい的な匂いのする人ですよね、アローナ様」 と言う声がした。  振り向くと、シャナが立っていた。
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