娼館でなにか学んできたのか?

25/34
前へ
/358ページ
次へ
「美女千人と酒樽千個を送れ。  さもなくば、暴動を起こす」  みなが沈黙し、読んだジンも沈黙した。 「……危険な敵国より、まずこいつを攻め滅ぼすべきだな」  そう呟いたあとでジンは、 「こんなもの放っておけ」 と言って、その書簡をカラになった焼き菓子の皿の横に投げた。  そして、気づいたように叫ぶ。 「なくなってるじゃないかっ、菓子っ!」 「あっ。  すみませんっ」 とアローナは謝った。  緊迫した空気で書簡を見つめている間、鷹に肩をつつかれるたび、機械的にエンの焼き菓子を与えてしまっていたようなのだ。 「アローナ~ッ。  鷹~っ」  迫りくるジンの怨嗟(えんさ)の声にアローナは逃げ腰になりながら。 「あっ、そんなにお気に召してました?  じゃ、じゃあ、鷹を使いに出して、エンにもう一度焼いてもらいますよ。  鷹」 と振り向いたが、鷹はお腹が重くて飛ぶ気にならないようだった。
/358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1228人が本棚に入れています
本棚に追加