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三階から見下ろしているその娘はすらりとして美しく、肌も白く。
黒く豊かな髪は艶やかで手入れが行き届いていた。
これなら申し分ない、とアハトが頷いたとき、案の定、その娘の許にさっきの少女たちが行った。
「……あの娘は何処から来たのだ?」
アハトはエメリアに訊いてみた。
「盗賊どもがオアシスの辺りからさらってきたらしいですよ。
あの異国の服からして、旅人なのでしょうが。
ま、金さえ払えば返してやってもいいのですが。
なにせ、しゃべれないし、この国の言葉を書くこともできないようなので」
ほう、とアハトは笑う。
「しゃべれないなら、都合がいいな。
余計なことを言わないから」
「まあでも、賢そうな娘なので、すぐに此処の言葉を覚えて書き始めるかもしれないですよ」
そうエメリアは言った。
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