王は私にたぶらかされたいのでしょうか?

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王は私にたぶらかされたいのでしょうか?

   アローナの従者たち一行の姿を確認しないまま、ジンはアローナを連れて塔から下りた。 「こんなところにお前といたら、突き落とされて殺されるかもしれん」  だが、そう言いながらも、ジンは何故か、しっかりアローナの手を握って階段を下りている。  不思議な人だなあ。  私が怖いなら、返せばいいのになー、アハト様に。  いやまあ、アハト様に返されても、私も困るし、アハト様も困るだろうけど。  広いアハトの部屋で向かい合って座り、沈黙するアハトと自分の姿が頭に浮かんだ。  ジンはそのままアローナを元の部屋に連れて行き、寝台に座らせた。  そういえば、朝から怒涛の展開で……。  もう眠いんだけど。  寝た途端に、 「やはり、こいつ、刺客かもしれん」 とか言われて、ドスッとやられたら嫌だなあ、と思い、アローナはジンを見つめる。  すると、ジンは赤くなり、 「……何故、お前はそんなに人を惑わすような瞳で見つめるのだ」 と言い出した。  いえいえ。  そのようなつもりは毛頭ございません、と思うアローナの横に、ジンは寝台を(きし)ませ、腰かけた。
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