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「さすが娼館の女だ。
こんな短時間にこの私をたぶらかすとは」
と言いながら、アローナの頬に触れてくる。
いや、だから、たぶらかすつもりはありません。
……っていうか、もしや、ジン様、たぶらかされたがっているのですか?
いやいや、無理です、とアローナは後ずさる。
だが、後ずさった分、ジンは前に出てくる。
「お前が清らかな乙女だとしても、娼館にいたのだ。
いろいろなことを見聞きして知っているのだろう?」
いや、だからですね。
私、娼館には本当に短時間しかいなかったので、あそこで得た新たな知識と言えば、
『娼館の粥は意外と美味い』
ってことだけなんですけど……。
アローナは頬に触れているジンの手を振り払うように、身をよじる。
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