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「せっかく砂漠を越えてやってきたアローナ姫をそのまま帰らせるのも申し訳ないな。
かと言って、王の座を追われた父の許に嫁がせるのも、アッサンドラとしては、なにか違うだろうしな。
大事に育てた姫を泣く泣く送ってきたのだろうから」
はい、それはもう、と父たちとの別れを思い出し、アローナがほろりと泣きそうになったとき、ジンが言った。
「私が姫を妃とするのが良いのだろうが……」
ジンは窓の外を見ながら、いろいろと今後のことを模索しているようだった。
か、勝手に私の結婚話が進んでいる……と青ざめてジンを見上げていると、ジンは、ふっと笑い、
「なんだ、その不安そうな顔は。
心配するな。
妃をもらったからと言って、お前を市中に放り出したりはせぬ。
一度、受け取った貢ぎ物だからな」
と言ってきた。
ジ、ジン様。
嬉しいんですけど。
それは浮気ですよーっ。
私に対する浮気ですよーっ。
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