さすがは娼館の女だな

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 いや、声が出たところで、ジンが通訳なしにアッサンドラの言葉を理解できるかはわからないのだが。  だが、ジンはアローナの手首をつかむと、その美しい黒い瞳を近づけ、言ってきた。 「なんだ。  キスをしろと言っているのか。  さすがは娼館の女だな。  純情そうに見えて積極的だ」  ちっ、違いますーっ、とアローナが口をぱくぱくさせて訴えたとき、 「王よっ。  アローナ姫の従者たち一行が、今度こそ城に着きましたぞっ」 と医務室から戻ってきたフェルナンが扉が跳ね開けた。  邪魔されたジンが振り返り、またか、という顔をする。  アローナはその後ろで、ジンに手首をつかまれ、また、口をぱくぱくさせていた。
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