ホワイトムスクの夏時間 - サマータイム -

11/26
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
「何だったら一緒に取りますか。ほら、先日当たった旅行券なんかもありますし」 私はタバコに火を点けるのを忘れて、慌ててマッチを灰皿に捨てた。 そう。 上杉さんのご友人の結婚式の二次会で、ヨーロッパ旅行とハワイ旅行、それに都内の某有名ホテルの食事付宿泊券まで当たったのだった。 私は少し慌ててもう一本マッチを擦りタバコに火を点けた。 「休めるかなぁ…。結構仕事は立て込んでいるんですけど…」 私は煙を吐きながら言う。 「あら、担当編集者は私ですからね…。その辺りは何とでもなると思いますよ」 上杉さん。 何とでもなるなら、普段からその調整はしてくれればいいのでは…。 「そう言えば、最近、サマータイムなんて言葉も聞かなくなりましたね…」 上杉さんは二人の空になったお皿を引きながら言う。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!