ホワイトムスクの夏時間 - サマータイム -

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うーん。 夏本番を迎えてしまった。 私はキッチンでアイスコーヒーをグラスに注いで、いつもと変わらず、私の原稿をチェックしている上杉さんを横目でちらと見る。 上杉さんのご友人の結婚式の二次会に出た後、急に進展があった様な気がしたのだが、あれは私の思い過ごしだったのだろうか。 「思い過ごしも恋のうち」なんていう歌が昔あった気がしたが、これも恋なのか…。 もしかすると、私に無理を言ってしまった上杉さんの私に対するお礼の様なモノなのかもしれない。 そんな風に思えて来た。 まあ、その後、そのような事は一切無しに暑い夏を迎えてしまった。 「先生。此処の表現なのですが…」 ダイニングテーブルの上杉さんはパソコンを覗き込みながら言う。 「あ、はい」 私は上杉さんの横に立ち、一緒にノートパソコンの画面を覗き込む。 「此処の、「古谷の立つ窓の傍から流れ込む風が」よりも「風の流れ込む古谷の立つ窓の傍から」の方が良くないですか…」 上杉さんは画面を指でなぞりながら言う。 私はアイスコーヒーを一口飲み、頷く。
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