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1.
「はい、朋子。今月のおこづかい、五百円ね」
「ありがとう!」
ママに渡された、銀色に光る大きな硬貨。私はそれをギュッとにぎりしめた。今おさいふにあるのは、お手伝いをして貯めた二百円。これでやっと、七百円のスターライトくじが一回引ける。
「コンビニ行ってくるね!」
玄関で靴をはいていたら、リビングからママの声が追いかけてきた。
「車に気をつけるのよ」
もう四年生なんだから、いつまでも子ども扱いしないでほしい。私はおさいふを持って、マンションの階段をかけ下りた。
近所のコンビニまで、早足で八分。
(他の人に全部買われちゃったり、してませんように!)
祈りながらガラスのドアを開けると、レジ前にはまだ、「ふわぷにゅおばけ」のぬいぐるみが飾ってあった。
(よかった……っ!)
一等と二等は誰かに当てられたらしく、景品が棚から消えている。ちょっと残念。でも、自分が上位賞を当てられるほどの強キャラだとは思ってない。
私は景品のそばに置かれた残りのくじを手にとり、枚数を数えた。
(一、二、三、四……残りは五枚、か)
残っている景品は、最下位賞のキーホルダーばかり。もちろんそれもハズレじゃないけど、一個七百円はさすがに高い。上位賞のなくなったスターライトくじの残りを買う価値があるのは、「ラスト賞」があるからだ。
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