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「あたし小学校のとき、親の転勤で3年間九州に行っててさ。戻ってきたの同じ町じゃなかったし、続いてる友達っていないんだ」
「そっかぁ。小学生だと、SNSもやってなかったもんね」
「しかも、出会いと別れが多かったせいか、小さい頃のことってあんまり覚えてないんだよね」
そのときどきで仲の良かった子は、何人か記憶に残っている。けれど、「りなちゃん」「ちいちゃん」などの呼び名と、ぼんやりとした印象しか思い出せない。幼児期の記憶がちゃんとあるという人もいるけれど、どんな脳の構造をしているんだろうと不思議に思ってしまう。
「私も、小学校にあがるときに引越ししたよ。おんなじだね」
未和がおさげにした黒髪を揺らして、あたしに笑いかけた。オン眉の前髪に、きちっとした三つ編み。どことなく、オタクっぽい雰囲気がただよっている。
(おんなじ、ねぇ……)
雑に仲間にくくられたあたしは、微妙な笑みで複雑な心境をごまかした。
アニメやゲームも普通に好きだけど、あたしはそっち系の人間じゃない。三次元のアイドルを推してるし、中学のときは彼氏もいた。それなのに、高校に入って数日でクラスにゆるくグループができあがったとき、あたしが組み込まれていたのはこの「二軍オタク系女子」グループだ。自己紹介で「好きなアニメは〜」なんて言ってしまったことを、今はちょっと後悔している。
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