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 まんがやドラマの人間関係で、「好きな設定」というのが誰にでもあると思う。例えば「同級生」、「先輩と後輩」、「平凡な女子(わたし)と学年イチのハイスペック男子」。  お弁当をあらかた食べ終わった昼休み、あたしたちは女子高生5人で机をくっつけて、そんな話題でもり上がっていた。 「敵同士ってロマンチックよね」 「生まれ変わった元恋人とか、萌えるぅ」 「私は異種族が好きかな〜相手が宇宙人とか吸血鬼でさ、寿命が違うのとかマジでよきじゃない?」  嗜好がだんだんマニアックになっていく。そんななか、「幼なじみ!」と笑顔で言ったのは、あたしの向かいの席に座っている未和(みわ)だった。 「わかる」 「アリ!」 「鉄板(テッパン)だよねぇ」  くっつけた机の真ん中に同意の声が集まる。「幼なじみ」が好みに刺さったらしい三人が、声のトーンを上げた。 「家が隣同士とか、いいよねぇ」 「部屋の窓からお互い見えるやつでしょ」 「現実ではまずありえないけど」 「そりゃあまぁ、ねぇ」  その設定は確かに、お話の中ではよく見る。あたしの好きなアニメでも、ちょっとドジな主人公の隣家には優秀な幼なじみが住んでいて、二人の成長と関係の変化がストーリーの主軸になっている。 「幼なじみかぁ、憧れるよね」  あたしがそう言うと、未和は少し意外そうな顔で聞いた。 「ゆう子ちゃんには、幼なじみはいないの?」
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