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緑色①
母親が会社に行った直後、インターホンが鳴った。天菜は時計を見上げ九時を回っていることを確認し、宅急便だろうかと玄関に向かう。
昨日は散々な目にあったし、夜はアユちゃんからのメッセージ攻めにあい、ほとほと疲れ切っていた。重い足取りで靴を引っ掛け鍵を開けて、外に出た。
「ひゃ!」
変態タクミが門の外でニコニコしながら立っている。恐ろしい、なんて恐ろしい朝なんだ。
「よく眠れたか? 悪霊が残ってないか見てやるからちょっと服脱ごうか」
大きな声で話すタクミに天菜が慌てる。天菜の家の目の前はゴミ捨て場になっており、今日はゴミの日なのでご近所さんが近くにいるのだ。
「ちょ! 何言ってるのよ」
「いやほら、君の中に俺のが残ってないか──」
「ああああ、いいからちょっとこっち来て!」
確信犯なのか、単なる天然なのか。タクミの話し方はいつだって卑猥だ。いや、言葉のチョイスが絶妙におかしい。ご近所さんに聞かれたら良からぬことを噂されてしまう。
手招きすると喜々として門を開け玄関までやってきた。一日経ってもイケメンだし、変態だし、悪夢は終わってないらしい。
「早く入ってよ!」
玄関の扉を開けて急かすと、タクミが扉を掴む天菜の手を握り「じゃあ、お言葉に甘えて!」と、寄生しようとした。三度目なので天菜はこの鳥肌や産毛の立ち方でタクミが何をしようとしたか理解し、手を引っ込めた。
「入っていいって言ったろ?」
「入っていいのは玄関にって意味。いいから来て!」
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