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「天菜のはかなり強力で、俺は随分前から天菜の存在を感じていた。そうだな二年くらい前か?」
天菜は「あ……」と、思わず声が出ていた。二年前と言ったらこの家に越してきた頃だ。両親がやっと手に入れたマイホーム。隣の県から引っ越してきていた。
「お前は俺に何にも感じない?」
ジッと見上げると、色素の薄い茶色の目が見下ろしていた。
「……変態だなぁとしか」
イケメンだとも思うが、そんなの見慣れれば多分なんとも思わなくなる──実際、変態なのが功を奏してイケメンタクミに緊張せずにすんでいた。
「ヤッてから言いなよ。まだヤッてもないうちに」
ため息混じりに言い返すあたりも、普通ではないと思った。
「さて、今日は悠長に話してる時間はないんだ。昨日のとは違って依頼をこなさなきゃならない。金がかかってるから悲鳴やら嘔吐は控えておくようにな」
玄関のシューズボックスについていた姿見でタクミは髪をサッと整えだす。サラサラの髪もやはり色素が薄い。肌も白いからそういう遺伝子なのだろう。
「俺に見惚れてないで出掛ける準備」
「え? 私も行くと思ってるの?」
あんな体験一度で勘弁してもらわないと、正気が保てなくなる。
「カラオケ代分くらい働けよ」
「いやだから、倍にして返すから」
「日当一万円」
「え……」
「拘束時間は二時間」
時給五千円。そんな割のいいバイトなんてあるのか。いやでも、あんなの飲み込むのは嫌だ。
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