緑色①

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 割の良さに心がぐらついたからなのか、隙を見せたら肩に手を置かれてまたしてもタクミが寄生されてしまった。 「とにかく急ぐからバッグだな。あとコート類」  また勝手に話し出し、家に上がると階段を見上げて「こっちか」と、上がっていく。  ああ、パジャマが脱いだままの状態なのにと慌てると「常日頃から俺に見られてることを意識しときゃだらしないのは治るだろ」と、思考を読んでくる。 「ちょっと! 私から出ていってよ。除霊には一応ついていくから、勝手に乗っ取るのやめて! このまま部屋まで来たら一生口利かないからね」  そこで天菜の足がピタリと止まった。 「それはやりにくいな。んじゃ、戻るか」  再び階段を下りようとするのでふと疑問を抱いた。 「もしかすると、触れないと寄生したり戻ったりができないの?」 「今のところはな。そのうちもう少し簡単にやれるようになるかもしれないけど」  スタスタ歩いていくと、タクミが玄関で大人しく待っている。 「あなたが私に寄生している間、あの体の中にはなんにもないの?」 「少しだけ意志を残してあるけど、基本的には空っぽの器みたいなもん」  なるほど、だから一緒に歩いていても天菜に寄生中は、本体はただついてくるだけで話すこともないのかと理解した。
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