緑色①

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 天菜からタクミがすっかり出ていったのを感じて、とにかく荷物を取りに二階に上がっていった。  確信は持てないが、タクミは天菜に寄生しているときしか天菜の思考を読めないらしい。そして、触れない限り寄生は出来ない。寄生中は本体は空っぽという。このへんのことを活かして、そのうち仕返ししてやりたいと心に誓う。  なんせ、変なモノを飲み込まされたり、勝手に家まで来られたり、あちらはやりたい放題だ。どこかでひと泡ふかしてやりたいと思うのは普通のことだと思う。  部屋に入り手早く脱いだままになっていたパジャマをパジャマ入れに突っ込み、起き出したままになっていた布団も捲って整えた。  それから、昨日ダッシュしたことを考慮して、動きやすいデニムにダウンを着込むといつも持っていくリュックにスマホを突っ込んで玄関へと戻っていった。 「おまたせ。先に確認するけど、ほんとにお金払ってくれるんでしょうね?」  タクミは玄関に腰を下ろして待っていたので立ち上がって、また鏡で髪をチェックする。 「成功報酬な。ちゃんと飲み込めなきゃダメだ。てか、払うって言って払わなかったら次はないだろ? 俺だって鬼畜じゃないんだ、払うって」  初対面でいきなり寄生し、あんな恐ろしいもの飲み込ませるなんて鬼畜だろとは思ったものの、そこは言わないでおいた。ドSらしいし喜ばれたら更に腹立たしい。
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